ベトナム農村 各地域の様子

行政区域一覧  行政区域地図
省名一覧地図   平均気温地図)1月7月
日本・ベトナム交流促進センター (ホームページ)

1. 山岳地帯(vung mien nui)
 山岳地帯は14省、山岳地帯を含む省は23である。中国、ラオス、カンボジアと4000kmにわたって国境を接している。

 面積は2300万ヘクタールで、全国土面積の3分の2を占めている。食糧生産にはむかないため、住民には焼き畑をおこない最低限の糧を得ているものが多い。現在までにかなり規制されてきたが、その影響は大きい。(水資源の枯渇、土地の荒廃、洪水、干ばつ、河川の流れへの影響など)。1945年に森林被覆面積は全国土の45%を占めていたが、現在では26%に減少している。これは約863万ヘクタールに過ぎない。ある山岳地帯の省は被覆面積が7-10%である。ちなみに全国の荒廃化された土地は約1342万ヘクタールで全国土の34.5%を占める。

 人口は2400万人で、全人口の3分の1、人口密度(平均)は100/平方キロメートルである(全国平均は200/平方キロメートル)。場所によっては5-7/平方キロメートル。

 この地域の大多数の住民は少数民族である。一般的に教育水準と物質的・文化的生活水準はかなり低い。

 水資源に関しては、全国の主要河川の源があることから豊富で、経済発展、生活、水力発電の需要にも十分応えることができる。これらの河川は毎年数百億立方メートルの土砂を運び、耕地面積の増加を生み出している。

 地域的には4つに分けることができる。

  1. 北東部:北部沿岸から中国国境の半ばまで。少数民族のタイ(Tay)、ヌン(Nung)、ザオ(Dao)族などが居住。中国貿易の発展の影響などで最近の生活条件の改善は著しい。穀物生産、林業、工業作物・果樹栽培、畜産が主要。
  2. 北西部:北東部からラオス国境まで。少数民族のターイ(Thai)、ムオン(Muong)、フモン(H'Mong)族などが居住。一般的に物質的生活水準は低い。林業、米、畜産、工業作物、果樹、薬草生産が主要。
  3. チュオンソン(Truong son)山脈部:北西部から中部高原(タイグエン)まで。ホアビン(Hoa Binh)省、タインホア(Thanh Hoa)省から縦にチュオンソン山脈に沿って中部高原まで。海からの台風と、ラオスからの熱風を受け気候はとても厳しい。高山や河川によって分断され、居住する少数民族もきわめて少数で分散している。ある少数民族は数百人に過ぎない。他の地区に比べると物質的生活水準はきわめて低い。
  4. 中部高原(タイグエン)部:4省から成り立つ。地域としては高原地帯で一つのまとまりがある。ラオス、カンボジアと国境を接している。気候は乾燥、高温で、季節は雨期と乾季に明確に分かれている。コーヒー、ゴム、茶などの生産が盛ん。森林被覆率も40%。この地域の少数民族は、エデ(Ede)、バナ(Bana)、ザーライ(Giarai)族など。
  5. 南東部:中部高原からメコンデルタまで。他の地区に比べかなり裕福。ホーチミン市にも近く、農・林産物加工工業地区もある。人口密度も250/平方キロメートル。少数民族の居住は少ない。

  「ベトナム農村・農業経済・社会の全面的発展」(CHU HUU QUY19963月出版から

参考写真)中国国境(北西部)ラオカイ省サパ フモン(H'Mong)族の村
     中部高原(タイグエン) エデ(Ede)族の集落

2. メコンデルタ地帯(vung Dong bang song Cuu Long「クーロン河平野」)

 39568km2の面積、国土の12%を占め、約1606万人の人口、全人口の22.08%を占めている(1995年)。ロンアン(Long An)、ティエンザン(Tien Giang)、ベンチェ(Ben Tre)、ビンロン(Vinh Long)、チャビン(Tra Vinh)、カントー(Can Tho)、ソクチャン(Soc Trang)、バクリェウ(Bac Lieu)、カマウ(Ca Mau)、キェンザン(Kien Giang)、アンザン(An Giang)、ドンタップ(Dong Thap) 省がこの地域を構成している。

 クーロン河平野は、インドシナ半島の南端に位置し、ホーチミン市と固く結びついている。カントー市がこの地域の経済・科学・文化的な中心である。カントー市にはチャーノック工業団地、空港、港湾、大学がある。

 基本的にはメコン河の沖積平野で、平均海抜高度は3〜5mである。

 この地区は3つの土地:

  1. 260万ヘクタールの肥沃な土地、
  2. 160万ヘクタールの明礬の多い土地(ドンタップ地方を中心に広がっている)、
  3. 74.4万ヘクタールの塩分の多い土地(沿海部)
 に区分される。

 上記2と3の地区は乾季と雨季で面積が変わり、乾季は250万ヘクタールであるのに対し、雨季は150万ヘクタールになる。
 現在、この地方で米を生産している面積は280万ヘクタールで、国内最大である。他にも、とうもろこし、さつまいも、さとうきび、大豆、落花生、ジュート、バナナ、やしの栽培に適している。また、日照時間が長く、降雨量が多いので、3期作が可能である。

 7〜8月に始まり11月〜12月に終わる雨季は洪水をもたらすが、乾季に水量は激減する。雨季の水は塩害と明礬の毒を洗い流してくれる。運河や河川が重要な水上交通路としての役割を果たし、淡水水産物の養殖に利用されている。塩分を含んだ地域でもえびなどの水産物の養殖に利用されている。 クーロン河平野は、736kmの海岸線を持ち多くの港湾を持っている。この地域には15万ヘクタールのインジゴとマングローブの森林がある。

 この地域は17世紀に入って主にベト人(キン人)が征服した地域である。人口増加率は高く、最近18年間で520万人の増加があった。人口は東部に集中している(ティエンザンは708人/km2、ビンロンは714人/km2であるのに対して、ミンハイは229人/km2)。約70万人のクメール人がアンザン、キェンザン、ビンロン、チャビン、ソクチャン、カントーの各省に住んでいる。チャクドック(アンザン省)にはチャム人が住んでいる。水稲の栽培と水産物の漁・養殖業を主要な産業としており、性格的には、勤勉、正直、積極的であり、商品生産に機敏である。

 食糧生産面積は約324万ヘクタール(1995年)で全国の40.60%を占めている。籾換算した食糧生産高は1299万トンで全国の44.46%を占めている。この地域の食糧生産の98.7%は米である。1人あたりの食糧生産高は1人あたり808.7kgである。

  「ベトナム経済地理」(国民経済大学経済・環境管理部門、ダンニュートアン) 1998年出版より

(以下、作成中です)