「ベトナムの社会・経済開発」 1997年夏 10号
無断転載禁止
Dr. Ngo Dinh Quang 税務総局
Eng. Nguyen Tien Dung 情報工学研究所
ベトナムでの税制は1980年代の終わりまで非常に単純であった。 農業税のほかには2つのものが非農業活動に適用された。一つは国家企業に対してで、もう一つは民間部門に対してであった。長期に渡り、国家事業は完全に国家財政に依存していた。 国家は運転資金を彼らに提供し、そして彼らの利益は国家財政に提供されなければならなかった。 一方、民間の経済部門は公正に取り扱われず、発展も奨励されなかった。 このような税金のシステムは市場経済に適していないことを証明している。
この矛盾が明らかになって後、包括的な税制への移行が1980年代の終わりに政府によって着手された。 それは迅速に行われて、そしてかなりの成果を得た。新しい税制が確立されて、国家歳入が着実に増加し、そのことにより経済の安定化と新しいビジネス環境の創造に貢献した。 新しい税制がどちらかと言うと近代的で、そして完全であると見なされてきたけれども、重大な欠陥がいまだに存在している。 この文章は成果と税制改革の問題を扱う。 それは開発目標に向かって同じく現在の税制の役割を分析する。2番目の部分で我々は同じく現在の税制の基本的な欠点を見る。開発政策における手段として、税制は歳入の創造、所得配分の改良および成長・投資の増加という3つの主な目的に向かわなくてはならない。現在の税制によるこれらの目的の達成度はその次の部分の主要な内容である。最後の部分では新しい税制改革の計画を調べる。
現在のベトナムの税制は、外国の投資者に適用された特別な規定以外の10種類の税金を含んでいる。これらすべての税金は、税制改革の最初の段階で1990年代初めに広められて、そしてしばらく後に改正された。これらの税金の簡単な説明を付録とする。
税制改革はベトナムにおいて増加する歳入のために根本的な変更を引き起こした。1986年には税金が年度全体の国家予算の20パーセント以上を占めており、そしてそれの70パーセントが国家運営事業から来た。1995年に税金と他の料金が全体の歳入の85パーセントを構成し、その主要な源泉になった。国家運営事業は、その分担額が50パーセントまで減少したけれども、国家財政の歳入の主要な源泉のままである。歳入源では税金のほかに、最も重要なものは石油とガスから来ている(GDPの2.7パーセントあるいは全体の国家財政の歳入の11パーセントを占めている)。国家運営の事業の償却された資金が、1992−1994年の時期に国家財政の9パーセント以上を占めて、同じく重要な歳入源であった。1995年から政府は再投資を奨励するため、国家事業からこれらの基金を徴収するのをやめた。
表1:1990〜1995年の財政状況
GDP |
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(現在価格) |
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歳入総額 |
%GDP %GDP %GDP |
14.7 |
22.3 |
24.7 |
24.3 |
国家歳出 |
%GDP %GDP |
22.7 |
28.5 |
27.4 |
25.8 |
財政赤字 |
%GDP |
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料金と税金からの歳入構造 |
% % % % % % % % |
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一般に、徴税はまだ非常に単調で、そして少数の売上高、所得と輸出入のような主な税金に依存している。これらの3つの種類の税金だけで昨年の税収の70パーセント弱に貢献した。税制の単調性は上昇する歳入を不安定にする主な要因である。税金構造とその有効性は以下で一層慎重に分析する。
直接税。発展の現在の水準に対応して、所得、財産と土地の移譲からの税を含めた直接税が国家財政の歳入全体の20パーセント強を占めている。この数字は発展した工業国のそれが一般に30あるいは40パーセントになるという数字に比較して低い。昨年、所得税は税収のおよそ18パーセントあるいはGDPの3.9パーセントに貢献している主な直接的なものであった。
1990年に実施された個人所得税は全体の税収のたった1パーセント以下に貢献するだけである。これには2つの理由がある:
第1に、ベトナムはまだ徴税に制限のある非常に貧しい国である。第2に、個人所得の難しい査定に関する経理の信頼性が高いシステムの欠如が、一層重要である。それ故に個人的な所得税の徴収は外国人と合弁会社で働いているベトナム人職員の間だけに制限されている。
国内市場における間接税
国内市場での2つの主要な間接税が商品及びサービスに対する売上税と特別消費税である。商品及びサービスに対する売上税は、1995年に国家財政の歳入のおよそ15パーセントを占めた。この税金はしかし、その重複という理由で極めて非難された。 1992年以降、重要な変更が、重複がはっきりと明らかになった貿易と建設でおこなわれた。 売上税は単なる売上げに対してでなく、売上げと仕入れの差額に課する。1995年に国家財政の歳入全体のおよそ6パーセントを占めた特別消費税は、用途に関し概してぜいたく品あるいは奨励されない商品に課された。ワイン、ビール、タバコと輸入された自動車にだけ徴収される。
輸出入関税
輸出入関税からの歳入は、過去に外国貿易の増大を反映して、そして国家財政の歳入全体の3分の1に貢献して、迅速に増加した。 税関が輸出入関税から多大な歳入を得る。 現在、ベトナムはただ天然資源を守り、基礎原材料の輸出を制限するために、若干の輸出用農業商品に低い税金を課するだけである。 一方、非常に高い関税が国内の生産高を守る意見に基づき、消費輸入に課される。原材料、機械と装置には低い関税が課される。
税制の有効性 :
ベトナムが税金の比較的近代的なシステムを制定し、そして税制改革はどちらかというと成功しているけれども、多くの欠陥がその中にはまだ存在する。現在の最も重大な問題は税率構造が複雑すぎることである。例えば、売上税は0パーセントから30パーセントまで11の異なった税率を持っている。所得税さえ同じく3つの税率を持っている。
輸入税は「他のどのような世界中の関税事務所も彼らの正確な管理を行うことができない」ほど複雑な1800以上の貿易品目のために34の率を持っている。税金のあまりにも複雑なシステムとあいまいな税金規則が脱税状態を作った。彼らは、他の国でこの数字が2〜3パーセントだけにすぎないのに対し、現在ベトナムでの管理は、全体の税収のおよそ10パーセントと見積もられる。
もう1つの税務における困難は信頼性が高い計算システムの欠如であり、ベトナムにおいてますます広がりつつある小企業活動と民間産業の管理を難しくしている。これはなぜ税収の損失がこの部門でたいてい起きてきたかの理由である。このほかに、ベトナムは税金規則の効果的で、遵守を強制的に実施する厳格なシステムを持っていなかった。結果として、税金義務が尊重されず、そして厳密に守られることがなかった。
もう1つの基本的な欠点が国内、外国投資の間に公正が保証されなかったことである。
製造とサービスで国内事業に押し付けられた税率がそれぞれ35と45パーセントである時に、外国の会社あるいは合弁企業はただ彼らの利益の25パーセントを上限として所得税を支払うだけであり、さらに免除、または、支払年数は2年間減らされる。国家事業と民間事業の間にも同じく待遇の差別がある。後者が、もし彼らの利益が規定をしのぐなら、所得税を越えて追加の税金を支払わなければならない間に、前者は免除されるか、あるいは、彼らが、あまりにも低い利益を得る場合に備えて、彼らの所得税は減額されるのである。
国家財政の歳入における急速な増加は税制改革の顕著な成果である。 1990年代の始めの一連の新しい税金の公表と迅速な経済の更生は国家財政の増加に決定的な貢献をした。 国家財政の歳入における絶え間がない増加が、1990年のGDPの14.7パーセントから1994年の25パーセント弱まで記録された。
実際は国家財政の歳入における増加は、市場経済への過渡期における経済安定に重要な役割を演じた。 政府の歳出は規則的に増加している。 国家セクターの投資は、その半分以上が国家財政から支出され、GDPの10パーセント以上にまで増加している。 1992年に初めて国家財政において貯蓄があり、そしてそれは今まで絶え間無く増加した。
上に示されるように、「歳入の増加」が税制改革の最も重要な目標として提出された。それは首尾よく実施された。 しかし、国家財政はまだ現在そして投資歳出によって大きな圧力を受けている。 赤字予算が最近の歳月で合理的な程度で(今まで)抑制されてきた(GDPのおよそ3パーセント)けれども、それは繊細な問題であり、計画作成と開発計画の実行において主要なテーマとなってきた。 より高い歳出に財政支出するために、国家財政の歳入におけるそれ以上の増加が必要で、そして可能であるか否か、というように質問は提出される。 我々の観点では、歳出を減少させる適切な解決は、国家財政の歳入の増加の代わりに成長している支出を制限するための政府の手での資源の一層合理的な使用である。 この見方は以下で解明する。
現在のベトナムの国家財政への動員はすでに高く、そしてさらに増加することは難しいように思われる。 国家財政の歳入における増加を支持する論拠は主に小企業部門で歳入の損失を抑制する可能性に依存する。けれどもおそらく現在の税務によってこの仕事を実行することは難しい。 これに加えるに、言及されたように、少種の主要な税金に基づいた税金構造はさらに歳入を不安定にした。 最近の2年で、徴税を強化する上での困難は、本当の歳入が(今まで)計画目標をかなり下回った時、一層はっきりと明らかになった。
課税の合理的増加の決定は、経済構造の収入、外国貿易、天然資源の開発、政府の運営能力などのような一連の要素等によって規定される経済の税負担可能性に基づいていなければならない。 より高い1人当たり所得が政府にとって市民の生活水準に影響を与えることなく高い税金を徴収することが可能であるようにする。 農業と非公式な小企業活動からの税金徴収は限定される。それ故に産業、サービスと都市の開発の高い割合は税金徴収のより大きい可能性を作るであろう。税金が国際貿易に課されて、概して関税は国家財政の歳入で常に重要な構成要素を形成した。豊富な天然資源は歳入を増やすための当然のもうひとつの土台である。
合理的な課税システムを定義すべく量的な原理を規定することは難しい。表2がベトナムと他の東南アジア諸国経済の間で他の経済水準とGDPに占める税負担比率を比較する。すべての他の国での税負担可能性がベトナムでそれより高いこと、しかし彼らの税負担比率はGDPの17から18パーセントまでを占め、ベトナムよりずっと低いことは非常に明確である。
表2:アセアン諸国の税負担可能性比較
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平均所得(ドル) |
比率(%GDP) |
(%GDP) |
ベトナム |
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タイ |
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マレーシア |
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シンガポール |
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インドネシア |
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フィリピン |
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政府は、国家財政の歳入を増やすことについての目標を明記することにおいて同じく注意深いように勧められる。その目的は、消極的な影響が民間部門の貯蓄と投資で起きないためである。より高い課税が政府の財政のより大きい集中を意味し、そしてそれは民間部門の事業範囲を狭めるであろう。この問題の一層詳細な検討は第5節で扱う。
成長とともに、公正は経済発展の重要な目的である。 税金は所得再分配において直接的で単なる道具であるだけではない。貧乏の絶滅、それぞれの地域と社会的なグループの間の所得の相違の縮小は政府の財政支出プログラムを通して通常実施される。課税は貧しい人たちを豊かにすることができない、しかし本当にそれはただ金持ちを貧しくすることができるだけである。税金が所得の分配を統制するのはこの効果によってである。税制による所得分配における正当な目標の追跡による査定は本質的に税負担の分析であり、他面で、彼らの利用可能な所得からのそれぞれの所得グループがどれぐらいの税金を支払ったかを調査することはその点検となる。
理論的に、税金は納税者に彼らの利益を減らすことによって、そして消費者として価格を上昇させ、そしてある量の貨幣での購入力を減少させることによって、個人と世帯収入に影響を与えるであろう。生産者と消費者の間の税分配は、必要と価格の間の融通性に依存する。ある種類の必要の融通性の低い商品に対する税金の徴収は価格を上昇させ、課税効果は消費者により拡大して及ぶであろう。逆もまた同様であり、その価格は、もし税金が徴収されるなら、さらに少なく増加するであろう。彼あるいは彼女が主要な納税者であれば、生産者の利益もまた減少させられるであろう。一般に間接税と利益税が生産者の代わりに消費者に課されると考えられる。個人所得税と固定資産税としての直接税が納税者に課される。
税制が、もしより収入が少ないグループがより高いものより少額を支払うなら、所得分配あるいは累進性の上に良い効果を持つと考えられる。逆もまた同様であり、税制は逆進的である。ベトナムにおける税の所得分配効果の量的規定あるいはその累進性の検査は、現在の税率の構造があまりにも複雑で、そして人口の種々のグループの所得と消費に関する詳細なデータが欠けているために困難である。
所得分配の上の効果の予備的な評価がされたことがある。 計算は、1993年に国家計画委員会と統計総局によって実施された生活水準調査に基づき、ベトナムの住民の消費構造のデータを元にしていた。消費者グループ1と2が低い生活水準で、ベトナムの人口の50パーセントを占める;グループ4と5が満足な、そして高い生活水準を持っている。それぞれのグループでの消費構造が多くの主な項目にひとまとめにされ、そして次にある(1995年の国民投入算出表から引き出された)貿易品目を消費することにおいてそれぞれのグループが支払わなくてはならない税金を決定するためにそれぞれの項目のために対応する税金比率で乗算された。そうすることにおいて、我々は税金効果が消費者に対して完全に働くであろうと考える。これは税金構造で間接税の大きい割合という視点で適切である。
表3 : 税負担の分析。
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(1000ドン) |
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注記 : (a)1995年の投入と算出から、直接消費財に課された税金を含めてだけ描かれたデータ。
計算の結果はベトナムでの税制が、それほど明白ではないけれども、ある累進性を示していることを明らかにした。高い所得グループ(グループ4と5)がもっと多くの税金を支払った。にもかかわらず、この評価において、共通の税率がすべての消費者グループに適用され、そしてそれ故にそれは十分に現在の税金構造の累進性を反映することができない。 実際はより高等な消費者グループがもっと高級であるか、あるいは一層豪華な製品を使い、そしてより高い税金が彼らに課される。そのため累進性は結果より高いと見込まれる。ベトナムでの税制が所得分配の上に否定的な効果を持っている間接税に極めて依拠するという事実に、同じく注意が払われるべきである。累進性を持つけれども、多重な税金の現在の構造は、高い税率の貿易品目で脱税が広範囲にわたっているため、完全には遂行されなかった。 加えるに、今度の税制改革は税制の累進性に否定的な効果を起こすかも知れない。
もう1つのベトナムでの税制改革の重要な目標が経済成長を促進することである。この目標は様々な内容を含んでいる。最初に、税金は貯蓄を強化し、そして経済における投資と成長を奨励するよう意図されなくてはならない。 第二に、税政策は資源の分配の上に否定的な影響を避け、税務のコストを減らさなくてはならない。
貯蓄と投資の上の影響 :
税収の増加は民間の貯蓄と投資を減少させて、そして民間部門の事業を制限するかも知れない。実際に、過去数年にわたり貯蓄が税金の対GDP割合の増加と共に急速に増加した。しかしながら、投資を含む公共支出が同じく急速に増加して、そして増加したGDPのより大きい部分を占めた。民間の投資と消費がおそらく外部の融資を受けれらず減少した。国家予算と国内の借入金から概して融資を受けた政府の投資はGDPの12パーセントに増加して、そして経済(およそ60パーセント)の中で蓄積の主要部分を占めた。これは民間投資のための国内金融がかなり絞られたことを意味する。 その上、政府投資は常には効果的なプロジェクトと特徴付けられず、そして一般にそれは効果的に管理されることはない。ここから引き出されることができる結論は政府の歳入と歳出両方が既に高いレベルにあり、そして否定的な影響力が民間の貯蓄と投資に起きないために、融資が国家財政に集中されるべきではないということである。
表4 : 貯蓄と投資1990-1994。 (%GDP)
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1. 総投資 |
6.4 |
5.9 |
6.9 |
12.3 |
12.42 |
2. 国内貯蓄 |
- - |
3.1 6.9 |
6.3 7.5 |
6.3 8.3 |
6.2 10.93 |
3. 対外貯蓄 |
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経済の成長と投資の奨励に関して現在の税制の積極的な役割を疑う他の理由もある。他のASEAN諸国とベトナムの税制を比較して、Kazuyuki Moriはベトナムで国内の生産と事業への課税が他の国でよりかなり高いと述べた。ベトナムで事業に課された諸税を包括する実効税率は、タイとインドネシアのための対応する比率がそれぞれ30パーセントであり、そしてシンガポールがほとんど30パーセントである時に、利益全体の60パーセントから70パーセントまで変動する。そんな高い税率がベトナムの投資環境の上に好ましくない影響を与えたのである。
表5:ベトナムと他のASEAN諸国の税制の比較
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税の実効税率 |
(a)(%) |
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ベトナム |
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タイ |
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マレーシア |
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シンガポール |
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インドネシア |
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フィリピン |
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資源分配の上の影響。
最近の数年間、重要な進捗が税率構造を単純化することにおいてなされたが、ベトナムの税制はまだあまりにも複雑である。このような複雑な構造は政府の、ビジネス活動へのより深い干渉の意図を反映している。政府の見方によって、非常に重い税金が奨励されないものに課されるであろう間に、低い税金が奨励部門に課されるであろう。典型的な例は、採鉱産業に25パーセントの税率が課された間に、非常に高い所得税(45パーセント)がサービス部門に課されたということである。困難な状況にある生産部門はまた、税金削減を政府に要求することができる。これはベトナムでの税制が安定性に欠ける理由を説明する。もう1つの例は、高い税金がコストが高い、そして品質の低い国内の消費財を守るために消費者用輸入品に課されてきたということである。
現在の複雑な税金構造と経費の増加は資源の分配上に好ましくない影響を与えるであろう。それは効率の悪い生産部門を保護し、資本と労働の一層可能性がある分野への移動を制限するであろう。発展途上国における税制改革の研究は、その介入が少ないという意味で、経済の活動において効果的な税制はただ1つあるいは2つの税率だけを持っている中立の税制であるに違いないことを指摘している。
1995年に、政府は税制改革の第2段階と呼ばれる現在の税制の大規模な改革計画を始めた。その目的は、税制を完成し、地域と世界の経済にベトナム経済の融合を推し進めることであった。今後数年における税制改革の主要な対象を以下にみる。(表6参照のこと)
付加価値税(VAT)が売上税に代わるであろう
所得税の重複を廃止する重要な改革手段の1つが付加価値税の実行である。VAT法は国会でちょうど可決され、1999年1月1日より施行される。付加価値税が請求書控除方式によって計算されるであろう。
2つの問題がベトナムで付加価値税の適用で起こる : 管理能力と税率。付加価値税が首尾よく実行されるために不可欠な条件の1つがただ1つの税率だけを持っている単純な税金構造である。 これはベトナムで多重な所得税の実施において適当ではないように思われ、それ故に0、5、10、と20パーセントの4つの税率を持つ税金構造は遂行されるべきである。彼らのビジネスでの小さい、そして民間の事業によっての不十分な簿記が、付加価値税を計算することにおいて困難を起こして、もう1つの障害を出してきた。これは付加価値税の実施の前に注意深い準備を必要とする。
所得税改革
付加価値税のほかに、他の2つの税法−会社所得税と個人所得税−が同じく検討、可決された。。会社所得税が利益税に取って代わる。それはすべての経済の分野で同様に国内の、そして外国の投資者のために適用される1つの共通の税率(33パーセント)を持っている。 これはすべての経済セクターの間での平等を保証して、そして一層中立的な税金の徴収をすることになる。付加価値税のように、会社所得税は会社と大きい民間事業にだけ課される。個人所得税が小規模な個人事業に課される。
個人所得税に関する法律は、徴収対象となる所得の最小限を1,200,000ベトナムドンであると明記する。この所得は1人当たりの平均水準所得と比べて6倍高い。このような狭い納税義務により、税金支払人が少数の金持ちとベトナムで働いている外国人に限定される。発展途上国での税制改革の経験は、国家予算に個人所得税の寄与を増大させるために、ベトナムが課税ベースを広げ、税率を減少させるべきであることを示している。
輸入輸出税とASEAN自由貿易区域(AFTA)と合流すること
AFTAのメンバーとして、ベトナムは2006年に関税を5パーセント以下に引き下げなければならないであろう。1995年の終わりにおいて財政省はAFTAに参加するベトナムの商品品目を発表した。このリストは、関税率表でそれらの75パーセントを占めている3000以上の貿易品目を含んでいる。それらは、2つの種類に分かれる :
1.縮小品目のリスト : 20パーセント以下で徴収される貿易品目で、2006年に向け今から次第に減少させられる関税を持つ。
2.一時的な免除品目のリスト : 税金の20パーセント以上徴収される貿易品目は今後数年間にわたり税金削減を免除されているが、2006年に5パーセント以下に関税が削減される。
AFTAへの参加と関税削減は、国家財政の歳入に否定的な効果を持っているかも知れない。来る数年で、国家財政の収入は影響を与えられず、税率の0〜5パーセントだけが CEPTに加入している多くの貿易品目に課されるであろう。つまり真の関税削減はない。しかしながら、長い目で見れば関税からの歳入はかなり縮小するであろう;現在、それは国家財政の歳入の3分の1を占めている。国家財政の歳入を安定させるために、さらに多くを歳入の対象に加え、そして歳入構造を多様化することは必要である。
他の税金の改革
売上税に対する付加価値税の代替と共に、特別消費税の徴収は、豪華であるか、あるいは非奨励貿易品目に拡大されなくてはならない。消費に働きかけ、この課税は高収入を持っている人口の層の分担額を増やす。長い目で見れば国家財政の歳入の構造で直接税の割合を増やすことは必要である。相続財産と固定資産への課税がさらに拡大されなくてはならない。
税制改革は、税務システムの確立なくしては成功しないであろう。簿記会計が、小規模なものも含めて、民間事業に及ばれるべきである。 強制的な性格は税法の最大限の遵守を保証するために完全に遂行されなくてはならない。税金の自己申告のような、徴税における他の改革が同じく必要であり、小事業世帯のために税率の見積もりを提供する。
現行の税制改革の目的は、国家財政の中に、ほとんど汎用的な国内製品の4分の1を網羅することである。来たるべき数年での税制改革の主な仕事は、税率構造を単純化して、そして様々な税金を完成させることによって、税制の有効性を向上させることでなければならない。税金徴収業務の完成は、同じく税制改革の成功のための前提条件である。
税金の新しいシステムを築き上げることは、ベトナムの開発、増加、経済での成長と投資、所得の分配での有効性と公正の強化という目的を満たす。急速で安定した成長のための土台は、ダイナミックな民間部門である。それ故に政府は、民間部門の経営範囲を広げるために、歳入を安定させ、財政支出を合理化することに方向を変えるべきである。
公正も、同じく開発の過程で重要な目標と見なされる。社会のさまざまな層への成長の利益のよりよい分配は同じく急速な成長と同様に必要である。
表6:現行の税金システムと将来の改革
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課税対象 |
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A. 現行税 |
システム |
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1. 事業免許税 |
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全ての事業と個人 |
月平均売上高 |
20,000〜60,000ドン/年の各種税率 |
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2. 売上税 |
1990年6月制定、 |
全事業活動、特別消費税対象輸入品・商品、農業生産物、信用活動を除く |
実際の月売上高、商業を除く |
0%〜30%の11税率 |
* 天災により困難に陥っている事業 |
3. 特別消費税 |
1990年6月制定、 |
4品目-ワイン、ビール、タバコと輸入自動車-を製造または輸入している事業 |
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商品のタイプによる15%から100%の変動 |
困難に遭っている事業のケースごとに免除または削減 |
4. 輸出入関税 |
1991年12月に制定、 |
国境を越える全ての輸出入品、移動・集配中の商品を除く |
* 輸出品はFOB価格により計算 |
* 輸出税は0%〜45%の11税率 |
* 免除と削減は、援助物資、再輸出される輸入品、輸出のために加工される原料、に適用される。 |
5. 利益税 |
1990年6月制定 |
農業生産と直接投資を持つ事業を除く経済活動 |
事業から得られた年間利益 |
3税率 |
* 免除と削減は、科学調査活動、新規設立事業、新技術を供給している事業、投資奨励経済分野に適用される |
6. 土地使用に関する税 |
1993年6月制定 |
農業生産(耕作、林業、水産)に土地を使用する組織と個人。直接投資事業は除く。 |
位置、土壌、質、地形、気候によって分類された土地範疇による |
税率は様々な土地範疇に対する水田容積により計算される |
* 免除と削減は、天災を被った地域に対して適用される |
7. 土地使用権の移転に関する税 |
1994年9月制定 |
相続、世帯の分割、不動産事業及び土地貸与を除く土地使用権の購入、販売、移転 |
土地の価値による課税 |
* 宅地と建設用地は20% |
* 免除と削減は、遠隔地に住む官吏と幹部、社会支援政策の対象となっている住民に対して実施される |
8. 家屋と土地の所有に対する税 |
1992年9月に制定、1994年5月に改訂 |
家屋、宅地、建設用地を所有する組織と個人 |
土地の地区と範疇により計算される |
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* 免除と削減は、政府研究機関、国防プロジェクト、文化設備、遠隔地と山岳地方に実施される |
9. 個人所得税 |
1991年4月に制定、1994年5月に改訂 |
* 200万ドン/月を越す定期収入のあるベトナム人 |
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定期収入:ベトナム人は0%〜60%の7税率 |
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10. 天然資源に対する税 |
1990年に制定 |
天然資源を採掘する組織と個人(石油とガスに関する法律で規定される石油とガスを除く) |
天然資源の販売からの受領高 |
2%〜10%の税率 |
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11. 外国直接投資に関する税 |
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直接投資資本を有する会社 |
*
利益税は獲得利益の25%(石油、ガスと天然資源の採掘を除く) |
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* 免除と削減は、5〜10年の期間で10%〜20%の範囲 |
B. 新税 |
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12. 付加価値税 |
1997年5月に制定、 |
*
全ての会社、事業、大規模な世帯に関して課税(6億ドン/年領収額) |
販売領収額と購入コストの差額 |
0%、5%、10%、20%の4税率 |
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13. 会社所得税 |
1997年5月に制定、 |
* 全ての事業 |
事業利益と事業活動以外の他の収入 |
* 事業活動に対する唯一の共通の33%税率 |
*
重工業は本税が実施されたとき最初の2年間税率25%が維持される |
14. 個人所得税 |
高額所得者に対する課税に代替するために制定されるだろう |
ベトナム人とベトナムに定住する外国人 |
* 定期、不定期の所得 |
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