ズォン・ティ・クォン(母子擁護・保健研究所教授)
北部28省および中央直轄市の母子保健センター、産婦人科病院から提供されたデータ(完成データではない)と中部・南部のデータを比較した約1年間の母子保健に関する状況を簡単に述べると以下の通りである。
1)出生の状況
出生の状況について、特に注意すべき点は以下の通りである。
1.1998年の9カ月間の出生総数は1997年よりも減少しているが、死産件数と新生児死亡数は増加している。
2.1998年の9カ月間の出生数は1997年よりも減少しているため新生児生存数も少なくなっているが、その一方で2500グラム以下の低体重児が新生児総数の59.3(対1000人比)と急激に増加している。
北部における低体重児の出生率も54.8(対1000人比)であり考慮すべき問題である(表1参照)。
表1 地域別出生状況および前年比
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出生総数 |
352,400 |
99,088 |
319,610 |
771,098 |
1159,337 |
850,829 |
死産 |
1,144 |
765 |
1,323 |
3,232 |
4,465 |
2,313 |
新生児死亡 |
3,507 |
884 |
2,312 |
6,703 |
6,870 |
5,274 |
2500g以下の新生児 |
19,089 |
7,989 |
18,225 |
45,303 |
65,222 |
37,710 |
2500g以上の新生児 |
329,188 |
89,306 |
299,896 |
718,390 |
1,100,844 |
807,679 |
新生児生存総数 |
348,277 |
97,295 |
318,121 |
763,693 |
1,166,066 |
845,389 |
新生児生存総数に対する低体重児の割合(対1000人比) |
54.8 |
82.1 |
57.2 |
59.3 |
55.93 |
44.6 |
2)5つの産科合併症について
1998年の9カ月間の合併症は6009件と、97年の6789件より減少している。また分娩以外の原因による死亡も含めた妊産婦死亡も減少している。
妊産婦死亡の原因を分析すると、感染症による死亡の減少は明らかであるが、子宮破裂は2倍近い増加である。特に北部28省では、子宮破裂による死亡が33.3%である。臍帯感染による破傷風による死亡は97年比で2倍近い増加であり、特に中部、南部においては著しい(表2参照)。
表2 地域別産科合併症および前年比
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97年9カ月 | ||||||||
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分娩時出血 |
2,184 |
49 |
2.24 |
512 |
21 |
4.1 |
1,348 |
27 |
2 |
4,044 |
97 |
2.77 |
2.29 |
感染症 |
640 |
12 |
1.87 |
182 |
7 |
3.84 |
370 |
2 |
0.54 |
1,192 |
21 |
1.76 |
3.88 |
痙攣、ショック |
166 |
2 |
1.2 |
75 |
3 |
4 |
429 |
10 |
2.3 |
670 |
15 |
2.23 |
2.89 |
子宮破裂 |
33 |
11 |
33.3 |
18 |
2 |
1.1 |
54 |
3 |
5.5 |
105 |
16 |
13.3 |
7.32 |
臍帯感染による破傷風 |
54 |
22 |
40.7 |
15 |
12 |
80 |
18 |
15 |
83 |
87 |
49 |
67 |
38.2 |
上記5つの合併症による死亡 |
3,023 |
74 |
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787 |
33 |
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2,301 |
42 |
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6,009 |
149 |
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186/6,789 |
その他の原因による死亡 |
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33 |
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12 |
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27 |
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72 |
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87 |
妊婦死亡一般 |
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107 |
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45 |
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69 |
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221 |
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273 |
問題点および今後の課題について
1−全国的に、また北部28省では出生数の減少が明らかである。しかし死産数および新生児死亡数は依然として多く、妊婦の健康管理にもっと注意が払われなければならない。
2−女性の生活が改善されているにもかかわらず、1998年の低体重児の比率は97年と比較して増加したのはなぜか、妊娠時の栄養教育が不足しているのか、等の問題を究明する必要がある。
3−妊産婦死亡数と産科合併症件数は減少しているが、子宮破裂は依然として多く、特に北部において増加している。早急に医療機関に移送できるよう、ネットワーク作りと早期発見が課題である。
4−全国規模に展開している破傷風予防注射が90%以上の実施率である一方、臍帯感染破傷風による新生児死亡は97年と比較して2倍近くに増加している。妊婦への破傷風予防注射、助産施設へのワクチンの供給に関する問題を再検討する必要があろう。
5−母子保健事業はまだ充実しておらず、また当然家族計画事業も達成されていない。人工妊娠中絶件数、特に3カ月以上の中絶件数を減らすため、第3子を生まない運動、避妊薬投与・注射容認運動に目を向ける必要がある。現在発症している産科合併症は主に中絶手術によって引き起こされたものであり、必ず死亡事例が発生している。それ故、国家医療機関および私立医療機関において中絶手術を行う者に対して、再教育、管理、検査・監督を常時実施しなければならない。