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「ベトナム経済時報」
(Thoi bao Kinh te Viet Nam) 99号98/12/12より仮訳  無断転載禁止

どれだけの農家がまだ裕福ではないのか?

資金不足と物価高がハードル

 

農民会とホーチミン市党委員会経済委員会によれば、郊外地区の農林漁業世帯数の内23%だけが「優秀生産農家」 − 年間所得が3000万ドン以上(約26万円) − に分類され、残りの77%(約7400世帯)は充足水準以上と困窮に分類されている。

 どうしてこのような状況なのか? 農民世帯(経済セクターとしての「自営農民」:訳注)は日々多大な農林漁業生産額を生み出し、この業種全体において支配的な位置を占めている。これら自営農民による生産額は全農林漁業の1990年の88.72%、555兆1360億ドンから1997年には92.5%m2045兆8870億ドンへと増加した。他の経済セクターはわずかな比率と生産額をしめるに過ぎない。国営セクターは11.28%、70兆5950億ドン(1990年)から6.3%、140兆443億ドン(1997年)に減少し、外資企業に至ってはさらに少ない。

 それでは、耕作面積が小さいことが原因なのだろうか? 実際に、ホーチミン市の農業耕作地は80470ヘクタール(1990年)から75000ヘクタール(1997年)減少し、農家一世帯当たりの土地は平均で見ればたったの0.58ヘクタールである。より具体的には、農家総数の87%は1ヘクタール以下の耕地であり、その内で68.6%が0.6ヘクタール以下であり、10%だけが1〜2ヘクタール、1.67%が2ヘクタール以上の耕作地を持っているに過ぎない。耕地の規模は以上の通りで、もし米作のみに依存していれば、ホーチミン市郊外の農民は暮らし向きが良くなることはあり得ない。

資金を持っている者だけが
利益を確保できる

 ホーチミン市党委員会経済委員会の専門員であるグエン・スアン・サイン博士によれば、98年8月の委員会といくつかの県・周辺区(ホーチミン市は中央直轄市で他の省同様に下級行政機関として県を持つ。その他中心部には県と同級の区を持つ:訳注)と合同で「飛躍農家」(飛び抜けて所得の多い農家:訳注)332世帯に対して調査を行った。その内90%の農家が畜産(乳牛、豚、鶏、うずら、鳩など)を行い、生産用地面積は5000m2以下 − この用地面積はホーチミン市地域の農家平均水準を下回っており、中には150m2しか有していない農家もあった − であった。しかし、これらの世帯の生産に対する投資資金は最低1億ドン(約90万円)前後にのぼり、多くの世帯では10億ドン(約900万円)にさえ達する! 当然ながら得られる利潤も少なくなく、毎年、2千万から数億ドンにもなる。

 これらの世帯はみな共通の特徴を持っている。生産用地が少ないこと(世帯当たり4000〜5000m2)、しかしながら、投資資金は莫大で数億ドンにのぼり年間所得も2〜3億ドンに達することである。

 この「飛躍農家」のうち、エビの養殖と植林を結合して行っているか、または植林と水産物養殖を結合して行っているカンゾ県の266世帯は、世帯当たり最低1〜5ヘクタール(135世帯)の耕地を有し、5〜10ヘクタール(52世帯)、10〜20ヘクタール(38世帯)、20〜30ヘクタール(26世帯)、30ヘクタール以上(15世帯)となっている。これらの世帯の投資総投資金額は43億ドン、最低で2、3百万ドン、最高で2、3千万ドン、平均で1600万ドンである。1997年の売上は18億5900万ドンに達し、一世帯当たりの平均は700万ドンにのぼった。各世帯の売上と利潤は、植林された木が収穫できる時期が来れば将来、数倍に増加するであろう。とサイン氏は語った。

赤証による資金借入は
不透明

 「農民が資金に『窮して』いない訳ではないのに、銀行はいつも貸出資金が余っている。」スアントイトゥォン村の農民は解説する。18カ月間の乳牛肥育のための1千万ドンという小さな融資案件に対してさえ、銀行は萎縮して敢えて貸そうとはしなかった。ちょうどその頃(1997年半ば)に牛乳価格が下がる徴候が出始めたのが原因である。ましてや大規模な案件になれば、抵当資産が必要となる。しかし、農民にとっては最も価値のある「赤証」(土地使用権 − 土地使用権証明書が赤で印刷されていることから。ベトナムでは所有権は国家が有し、使用者は使用権・占有権を有する:訳注)を抵当として持参しても銀行は喜ばない。それもそのはずで、銀行が資金を保全しようとしたときにこの「赤証」を銀行が誰かに売却する権利はなく、また実際に売却できないからである!

 一方、ホクモン県農業・農村開発銀行の支店長は実際の状況をこう語っている。「現在農民の銀行への借入需要はもっぱら小中規模案件を通じた家族規模のものが主です。そのため、短期融資が主な貸出形態で、中期融資は10%以下を占めるに過ぎません。」

 多くの経済専門家の分析では、現在の農村の投資・融資政策は、ただ小農経済が倒壊しない範囲でこれに援助し、その中から工業、都市及び輸出に役立つ諸生産物を開拓しようとする消極的なものである。小農経済は自ら一生懸命に働き、ある時点になるとその拡大を停止する傾向にある。それは、窮乏の水準を少しだけ越えた時点であり、そのままでは到底裕福になるという一線を飛び越えることはできない。そのため、投資の重心を集中投資に移行し、新しい生産形態を創り出すために再投資を進め、現在の農業の専門化傾向を進めるということを中期・長期(融資)の目標とするように問題が提起されている。

機械化を望んでも
価格は青天井!

 統計によれば、クチ、ホクモン、ビンチャイン3県には316台の大型耕耘機、702台の小型耕耘機がある。平均では100世帯の農家に対し1.4〜1.5台があることになる。実際には機械化は、専門化を徐々に促し、農家の機械需要に応える網の目を創り出した。若干の農家は機械購入に投資し、作期ごとに他の世帯に貸し出している。

 しかし、1世帯は平均で、耕耘、脱穀機などの各種機械を借りるために1000m2当たり15万ドン(約1300円)から16万ドン(約1400円)を支払わなければならない。0.6ヘクタール当たり百万ドン(約8900円)である。このことは各農家が世帯当たり機械の借入として総収穫の25%に相当する金額を支払わなければならないということを意味する(1ヘクタール当たり4トンの収穫水準とし、籾価格が1kgあたり1800ドンとして計算する)。多くの専門家は繰り返し述べている。「米作農民の純所得はたった40%に過ぎない!」「25%の支出が耕耘と収穫などの項目だけに当てられるとしたら農民が受け入れなければならない機械化がいかに高価につくことか」と。もし、この機械化の費用について適正な調整が行われないならば、このような状況でどうして農民の生活水準を向上させられるだろうか?

 問題はどのように調整するかである。明らかなことは機械の持ち主に値下げを強いることはできないということである。できることは、燃料・部品価格による調整か、機械が過少な地域の機械の持ち主に対し低利融資を行うかだけである。同時に、現在の自然発生的な機械化の過程をそのままに放置して、将来機械の濫用などにいたらしめてはならないだろう。